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2011年12月27日火曜日

2011フィンランド その5 建築探訪2 近代・現代建築とデザインフォーラム

今回は建築探訪の第二回め。アルヴァー・アアルト設計作品以外の近代・現代建築並びにヘルシンキのデザインフォーラムを紹介します。



アルクティクム:北極圏博物館 
http://www.arktikum.fi/
1992年竣工 ロヴァニエミ市 設計:バーチ・ボンデラップ&トラップ・ヴァーデ
アルヴァー・アアルトが都市計画を行ったロヴァニエミに於いて、もう一棟忘れてはならない美しい現代建築があります。それが、このアルクティクムです。
ラップランドの生活習慣、文化並びに歴史等を紹介し展示するために、フィンランド独立75周年の年に建設されました。ロケーションはオウナス川がケミ川に合流する地点の川の畔で、建物の軸は北東方向を向いており、川の土手に埋め込む形で作られています。年間の入場者は100,000人にものぼります。設計を担当したのは、デンマークの建築家グループ。現在のエントランス棟は1997年に増築されました。
建物最大のシンボルは、オウナス川に向かって伸びる全長172mもの長大なガラスの廊下です。我々は薄暮の時間に訪れましたが、規則的に並んだ廊下の照明が幻想的な内装を浮かび上がらせていました。建設資材にラップランドの自然素材が多用されています。床材には近郊で採掘された赤花崗岩が敷かれ、その他ラップランドの松が多く使われています。また、全館統一されたデザインで配置され、空間の重要な要素である椅子は、白樺のフレームにトナカイの皮が貼られています。
この手の企画展示はアップデートが難しいので陳腐化が課題ですが、本館の展示品は手入れが行き届いており楽しめます。それにしても建築が織りなす印象的な空間造形が、極地の生活に思いをはせることに大きく寄与しているのは間違いありません。

アルクティクムの看板 極地で生活する人々

全景写真:アルクティクムのHPから借りてきました。
土手に埋め込まれた様子がよくわかります。
建物を分断して道路が通っていますが、内部からは気になりません。

エントランス棟 右脇には自転車置場

入り口脇は図書室になっています

長い硝子のトンネルは北へ向けて我々を誘う
廊下の両側が展示室になっている。

途中から地階へと空間が広がり、更にスペクタクル

トンネルの突き当りからは川が望める

カモメのオブジェ

赤花崗岩の床材が敷き詰められている

特徴的な椅子

トナカイの皮


ヘルシンキ中央駅
http://www.vr.fi/fi/ (フィンランド鉄道会社VRのHP)
1919年竣工  ヘルシンキ市 設計:エリエル・サーリネン
ヘルシンキからフィンランド各都市への列車やロシア行の国際列車も発着するヘルシンキの玄関口として、多くの人に利用されている。デザインコンペをエリエル・サーリネンが勝ち取り設計を担当した。RC造に花崗岩が貼られ、高さ48.5mの時計塔とランプを持った4体の巨人像が有名。鉄道会社VR社(まさしくJRだな)のシンボルでもある。アールヌーボー様式であり、フィンランドの国民ロマン主義建築の集大成ともいえる。設計者のエリエル・サーリネンは、20世紀半ばのアメリカを代表する建築家エーロ・サーリネンの父親でもある。小生は恥ずかしながら、そのことがわかっていなくて、セントルイスのゲートウェイアーチやTWAターミナルビルで知られるサーリネンが、なぜこのような建物を設計したのだろうと混乱しましたが、父親の仕事だったのですね。納得しました。

さて、肝心のヘルシンキ中央駅についてです。建物の印象としては重厚で、民族的な権威を掻き立てるようなどっしりとした造形です。ロシア統治の暗い時代からフィンランド独立時代を迎えた時期に建設されたので民族の高揚感を表す意味もあったのかもしれません。この時代のエリエル・サーリネンは、日本で言えば内務省大臣官房技士というような役割なのでしょう。重厚なのは良いですが、ヘルシンキのど真ん中に重しがあるようなちょっと重い感覚です。この造形を受け入れていた時代から、大きく変化したシャープなモダニズムの造形を受け入れられるような国民的な感性があるからこそ、ノキアに代表される先端の産業を生み、現在の国力の隆盛を形作っているのかとも想像しました。

正面全景 左右にランプを持った4体の巨人と右奥に時計塔
隣接広場から時計塔を見る


巨人
ディティール ヴォールトに美しい文様が施されている サッシの文様も特徴的
夜景
ホールの高い天井 美しいシャンデリアが吊られている
駅構内の写真 借りてきました ホームの屋根が美しい



(参考写真)セントルイス ゲートウェイアーチ(息子のエーロ・サーリネン設計)
(参考写真)JFK空港 TWAターミナルビル(こちらもエーロ・サーリネン設計)




キアズマ:ヘルシンキ現代美術館
http://www.kiasma.fi/
1998年竣工 ヘルシンキ市 設計:スティーヴン・ホール(米国人)
指名コンペにより、スティーヴン・ホール案が選定された。キアズマとは、交差点や、視神経の交差を意味する「交叉」に由来する。ロケーションはヘルシンキ中央駅、フィンランディア・ホール等のある市内でもまさしく中心街に位置する。あまり関係ないですが、フリージャズの巨匠「山下洋輔」の作品にも「キアズマ」という名曲が有りますね。
我々が訪れたときには、アフリカ現代アートの展示「ars11」が開かれていた。
メタリックな外壁からエントランスを入ると、天井全体がトップライトになった広大な吹き抜け空間があり、大きく弧を描く透明感のある白壁に階上へ登るスロープが取りついていた。天に昇っていくような深度のある空間演出が見事である。その吹抜けの壁面全体を使い、巨大なタペストリーが飾られていた。展示室を巡っていくとそれぞれの形態や採光が異なる室が立体的有機的に連続しており、空間の面白さに浸ることができる。企画展示もまことに刺激的で見事な美術展であった。
また、一階はパブリックスペースとなっており、入館者でなくとも軽食が取れるようになっている。

南面の正面:メタリックとガラス素材を組み合わせた外壁。
東棟、西棟が組み合されており、その真ん中が建物入口。

西棟の1階ガラスの部分がカフェになっている。

北側から見た全景:写真は借りてきました。
先鋭的な形態です。
ヘルシンキ中央駅とそれほど離れていない街区に共存している、そんな街です。

建物を入ってすぐ、広大な空間が現れ、スロープが奥の上空へ誘う。
自然光をふんだんに取り入れている。右はクローク。

上階からスロープを見る。巨大なアフリカンアートのタペストリー。



奥の階段室。更に浮遊感をたのしみながら登っていく。

連続した螺旋階段
  
北側に大きく開いた開口の壁の4階部分には美しい仕掛けがあった。
  
一階のカフェ。透明な椅子の配色が楽しい。

サーモンのオープンサンドを食べた。
企画展示のための美しい小冊子。ナプキンまでデザインを合わせている。

こちらはキッシュ



デザインフォーラム
http://designforum.fi/designforumfinland
ヘルシンキ市
1875年から組織されているデザインフォーラムフィンランドが運営する展示場。デザイン立国たる施設であろうか。港に近い古い建物を利用して、企画展示をするスペースや、販売店がある。3階部分は漫画の展示。フィンランドはムーミンを生んだ国。漫画も見るべきものが多い。
企画展示はシモ ヘイッキラ(http://www.periferiadesign.fi)の家具の展示であった。マリメッコの店舗デザインも手掛けている作家です。素材、形態、色彩にため息が出ます。


ランプ

古い煉瓦造りの建物の地下が、見事な現代デザイン展示場
美しき寝椅子の数々


赤い椅子に似合う服を着たいです。




ヘルシンキ市内 再生された町並み
ヨーロッパの街並みでいつも思うのは古い建物を利用する巧みさであります。ここヘルシンキもそれは例外ではありません。比較的古い建物の少ない街だとはご紹介しましたが、やはり石造りの重厚な建物は数多く存在し、それが街の景観を独特なものにしています。
目抜き通りにあるそれらの古い建物は内装が丁寧にリニューアルされ、先端の商業施設として機能しています。以前これらの建物はどのような利用をされていたのか、また再利用する際のフィンランドの建築法規や、法律改正の歴史などは調べてはいないので、技術論等のハードルの高さは知るところではありませんが、再生された建物は見事に景観に溶け込んでいて、この町を魅力ある都市にしています。


目抜き通り「エスプラナデ」に面する商業ビル
足回りには、ブランドショップが入る。

レストラン

小物ショップが入っている。

アーリッカもビルの色彩に合わせて看板を掲出している。

ビル全体が先進の商業ビルとして利用されている。
建物を新しく作る必要は無いと納得する。

ライティングの巧みさ

工事中の仮囲いも街の景観ですから

水鳥達

クリスマス前のディスプレイ

歩道が広くて、歩きやすい



建築探訪はこれにて終了
次回は旅の楽しみなどを書いてみます。