2011年12月19日月曜日

2011フィンランド その4 建築探訪 アルヴァー・アアルト編

今回の旅行記は、旅行の目的の一つであった、「北欧デザインを建築を主体に見る」についてです。

アルヴァー・アアルト(ALVAR AALTO)の作品達をめぐる

フィンランドの建築家と言えば、まず上がるのがアルヴァー・アアルトであることは、多くの人が認めるところだと思います。いくつかの作品を見ることができたので、それについて紹介していきます。

アルヴァー・アアルト(本名:Hugo Henrik Aalto 1898-1976) 
フィンランドが生んだ近代建築の巨匠。建築デザインのみならず、都市計画、家具、ガラス工芸そして絵画等多くの優れた作品を残した。
フィンランド南西部クオルタネで生れる。ヘルシンキ工科大学を卒業後設計事務所勤務を経て独立。その際に建築家リストの上位に名前が来て、仕事が来るように!と、姓名とも”A”で始まる名前にしたと言われる。北欧のモダニズム(機能主義)デザインの台頭を先導した。1946-48には米国に渡りマサチューセツ工科大学で教鞭をとる。残した作品はフィンランドに多く現存するが、その他ドイツ、米国、イタリア、デンマーク、スウェーデンでも作品を残している。アアルトのデザインした家具はアルテック社が制作販売している。またガラス器のデザインでは、アアルトベース が有名。こちらは、イッタラ社が販売しています。
 
Aalto Vase
1937年のパリ万博フィンランド館のために行なわれた、
「新しい用途を持った美的なガラスデザイン」
という指名コンペに出品するためにデザインされた。
iittala 社を代表する花瓶
フィンランドの湖の形からイメージしてフリーハンドで書かれたといわれる。

http://www.alvaraalto.fi/ アアルト財団のサイト
http://www.artek.fi/ アルテック社のサイト
http://www.aalto.com/ アアルトデザインを販売するサイト

ロヴァニエミ シティセンターの模型を前にしたアアルト

今回、アアルトの作品を見た印象
実に多岐にわたる作品を数多く作ったのだと、多作ぶりに驚きました。我々はほんの一部を見たにすぎません。作成された時期により作風が変化しているとはいえ、モダニズム(機能主義)が中心にあり、また徹底されていて造形の必然性に納得感があります。北欧の低い太陽を高度な技術で採光として取り入れ、また構造体はなるべくスリムにしてなおかつ美しく見せています。低い天井と大きな空間をリズミカルに配置することで空間の広がりに劇的な効果を生み出しています。家具や照明、更には取手等人と触れ合う部分や、ディティールについてもとても精力を注いでいて、全体をデザインコントロールしています。モノトーンで質実剛健。大人っぽくとてもおしゃれな印象です。


(1)ロヴァニエミに於ける作品

ロヴァニエミ市街地鳥瞰写真
第二回の旅行記に貼ったロヴァニエミの都市計画図と見比べてみてください。
白く縁どられている道路をたどると、トナカイの顔の形になっています。
矢印がシティセンターで、3棟の建物があり、
いずれもアアルト並びにアアルト事務所の設計です。
3棟は、ラッピアハウス、図書館、市役所。周囲はケミ川です。

シティセンター全体計画図


・ラッピアハウス(全体計画図の2)  
1975竣工 アアルトが亡くなる前に完成した最後の建物
放送局、音楽学校、多目的ホールの複合施設
波型の屋根が特徴


特徴的な波型造形屋根の部分は多目的ホール部分。
むしろ大地に沿った水平感を強く感じます。

正面より。朝日を浴びて茜色ですが、下の写真のタイルが全面の仕上げです。

側面ディティール

フラッグポールが林立しています。
左側は隣接の図書館

内部は入れませんでした。ホール内の写真を借りてきました。

・ロヴァニエミ図書館(全体計画図の1) 
1968年竣工 シティセンターの中で最初にできた建物。
扇型にカテゴリー別の書棚を配し、各々ハイサイドライトから自然光を取り入れている。床に段差をつけて、書棚の影をなくし、閲覧室の隅々が明るい。閲覧室の入口からほぼ全体が見渡せる。金物や細部のディティールまで濃密に作られている。機能主義を集大成的に高めた建築。

ラッピアハウスを望むエントランス
深い軒で、入場者を落ち着いて誘う。


閲覧室のハイサイドライトがそのまま特徴的なファサードに

閲覧室入口から全体を見渡す。
膨大な書物の林に入っていくようなわくわく感を掻き立てる。
奥の方が明るいのは、ハイサイドライトのおかげ。

閲覧室は撮影を遠慮したので、写真を借りました。
ハイサイドライトからの光。北欧の低い太陽をこれだけ取り込んでいる。
左下に見える窪みコーナーでは、床が半階分下がっており
書棚も下がっているおかげで、閉塞感無く収納量を増やしている。(下の図面参照)

雑誌閲覧室
家具、照明もアアルト

エントランスホール
照明、ドア取手などディティールが重厚にデザインされている。

トップライト:ホールをはじめいろいろな場所に配置されている。

図書館の図面


・ロヴァニエミ市役所(全体計画図の3)
1988年竣工 アアルトの死後、アアルト事務所の設計により建設された。
シティセンターの3棟とも低いファサードによって構成されていて、この市役所の議会棟並びにラッピアハウスの波型屋根が左右のウィング状に高くせり上がっているのを強調している。

市役所全景 右側の軒は図書館

議会棟と、石のインスタレーション

トナカイオブジェ

・ロヴァニエミ市街地の複合施設 
1963年竣工 一階は商業施設で上階は住宅です。ロヴァニエミの実業家の保有ビル。煉瓦の外壁にアアルト作成のレリーフが施されています。何気なく通り過ぎてしまうような普通のビルです。


商業施設の看板と共存


(2)ヘルシンキ周辺に於ける作品

・ヘルシンキ工科大学本館
1966年竣工 ヘルシンキ近郊オタニエミ。アアルトの母校。創立100周年を迎えるに際し、ヘルシンキ市内からオタニエミにキャンパス移転を行い、新築された。1949年に全体計画のコンペが行われ、アアルト案が当選。キャンパスは随時アアルトの基本計画に沿って建設された。
この本館はアアルトの代表作のひとつ。キャンパスの敷地の中でも小高い丘の上にあり、すり鉢状の大講堂が印象的な造形です。我々が訪れた時は一部改修工事中でした。第三回の教会めぐりの3番で紹介したオタニエミ教会が、同じキャンパス内にあります。

煉瓦の外壁。芝生の庭がひろびろと続く。



経年のため、煉瓦が剥がれるなど傷みはありました。

訪れたのは日曜であり、中には入れませんでした。
大講堂内部の写真を借りてきました。
ハイサイドライトと反射フィンで、天井を階段状におりあげています。
これ程の大規模なホールを自然光で明るくするのは、素晴らしい手法です。


・アアルト自邸兼スタジオ
1936年竣工 ヘルシンキ郊外の坂道と緑が豊富な高級住宅街の中にあります。アアルト財団の保有管理で一般公開されています。こじんまりとした住宅ですが、周辺の林の景観をリビングから眺めるように作られています。自然との融合もうまくはかられ、落ち着いた色調の休息の空間です。

坂道を上がりながら、玄関にアプローチしていく 


リビング側の外観 自然石を積んでいる。
灯りが見えている窓は、アアルトの仕事スペースの窓

二階ルーフバルコニーから。
建設当初は周りには林しかなかったそうですが、家が建つようになりました。
しかし、今も視界を遮るわけではなく、広々した景色です。
外壁にはリブがあり、ツタが絡みやすくなるよう工夫されています。

二階ルーフバルコニーのパーゴラ
円形鉄柱にコンクリートを充填しており、
いわばRCとSのハイブリットな架構となっています。
部材を細くする工夫です。

スタジオの中のアアルトの仕事スペース。庭を眺めながら。

リビング 落ち着いた色彩です。奥がスタジオ。
部屋の仕切は、大きな木製引戸です。

窓側のボードを含め、家具の背丈は低く抑えてあります。

ダイニング

二階のホール

有名なアアルトの吊り下げ照明
一方が窓状に明き光を出すようになっていて、
壁の絵画を照らしています。

図面

・アカデミア書店とカフェアアルト
1969年竣工 ヘルシンキの商業的な中心街。港からまっすぐに伸びる大通公園風の大通り「エスプラナデ」に面している商業施設。コンペによりアアルト設計案が採用された。大きなガラス面とスレンダーなストラクチャーによる明快な外観。左隣は、フィンランド人建築家サーリネン設計による銀行ビル。スカイラインを揃えている。

全景 写真を借りてきました。

建物の足元。クリスマス仕様になっています。
構造体が歩道から生えているようでディティールがきれいです。

書店部分 3層吹抜 素晴らしい空間です。

美しい白大理石の手摺壁にクリスマスのイルミネーションが映えます。
天井からはトップライトを通して採光しています。
二階の奥が、カフェアアルト。

カフェアアルトです。
店舗吹抜けのテラス状のところにあります。

明るい。椅子、照明等アアルトデザインのものを使っています。

照明です。アアルト自邸で紹介したのは、これの変形ですね。

軽食がおいしく、繁盛していました。

ケーキ

クロワッサンにシュリンプサラダ

ミートパイとビールだな!

これはピアスのイケメン


・アルテック社
アアルトデザインの家具を製造販売しているブランドのショウルーム。同じくエスプラナデに面している。欲しくてたまらない。



建築探訪アアルト編でした。
多作な作家の足取りを追ったので中身が濃いですね。
次回は、これ以外の建築、デザインを見ていきます。

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